BeatWordの歴史

BeatWord Version 1.0

BeatWord は、Windows 3.0 日本語版がまだ日本で発売される前、1991 年の 2 月頃に株式会社パシフィテック(現バウングローバル株式会社)にてWindows 3.0 日本語版用の日本語ワープロとして開発が始まりました。開発は、翌年の 1992年 9 月に終了し、1992 年の冬に、BeatWord Version 1.0 として一般市場にデビューしました。発売元は株式会社 マイクロソフトウェア アソシエイツ(現、株式会社 エムエスエイ)で、定価は 38,000円でした。

BeatWord の初期バージョンの開発には、Robert T Myers, David Stafford, 工藤 智行, Bernard S. Greenberg が作業にあたりました(敬称略)。特に、Bernard S. Greenberg は初期の内部構成のデザインや、内部バッファのしくみを作り、最初の BeatWord のプロトタイプのコア部分を実装しました(彼は世界初の lisp コンパイラの作成や、emacs の開発でも有名です)。また、David Stafford は BeatWord のWindows のフレームワークの基礎となる部分を担当しました。Robert T Myers はBeatWord のプロジェクトマネージャとしてBeatWord のデザインを担当しました。またアトリビュート、スタイル、アンドゥ、ファイルセーブ、IME のインターフェースなどは Robert T Myers による実装です。工藤 智行はプロジェクトのメンバへの C++ の指導、日本語 UI、lispのマクロ言語の試作(組み込みは見送られましたが)、レイアウト/フレーム編集機能の実装などを担当しました。David Stafford と Bernard S. Greenberg がプロジェクトから去った後、今野 博晴が開発に参加し、Bernard S. Greenberg が実装したバッファ周り、フォーマッティング周りの再実装や、make 環境の構築、その他広範に渡るインプリメントや最適化を担当しました。

BeatWord Version 2.0

Version 1.0 の発売後、すぐに Version 2.0 の開発が始まりました。開発を担当したのは今野 博晴と工藤 智行の二名でした。主な変更点は、縦書き対応、レイアウト/フレーム編集機能の向上、ユーザインターフェースを中心とする使い勝手の向上、そして当時、発売を控えていた Windows 3.1 日本語版への対応でした。また、Version 1.0 のユーザからの声のいくつかも機能に反映させました。Version 2.0 の開発は 1993 年の 4 月にベータ版が完成しベータテストが開始されました。このベータ版はNIFTY の MSA のフォーラムにても公開されました。数回のベータ版のアップデートを経てVersion 2.0.8 が最終的なバージョンとなりました。しかし、この段階で大手のワープロソフトの圧倒的なシェアや販売力のために BeatWord の発売が中止されることことになりました。ソフトウェアとしては完成の域に達しながら、BeatWord はこのまま長い長い眠りにつきました。

BeatWord Version 2.1

BeatWord が眠りについて約 6 年後の1999 年 3 月、BeatWord の開発者の一人であった工藤 智行が BeatWord の著作権等の権利を、バウングローバル株式会社より有限会社サイパックとして買い取り、フリーソフト化の作業を開始しました。

BeatWord の Version 2.0 は、Borland C++ Version 3.0 PC-98 用日本語ベータ版を使用して開発されていました。このままでは、フリーソフトとするにはライセンス上の問題が発生するため、一般に市販された Borland C++ Version 3.1 DOS/V 日本語版にてコンパイルできるようにしたのが、BeatWord Version 2.1 です。Version 2.0.8 から Version 2.1.0 の変更点は、コンパイラのバージョンの違いにより問題となる個所の修正、Win95/NT で動作させた場合の不具合の修正、オープンソースのフリーソフトとするにはライセンス的に問題となるコード等の書き換えです。Version 2.0.8 は系統立ったテスティングを行ったものであるため、その修正版である Version 2.1.0 は 16-bit 版としてはかなり安定したものであると考えられます。

現在、16-bit Windows 用の最終版である Version 2.1.0 は BeatWord 3 の正式リリース作業を優先しているため現在は非公開とさせていただいています。公開までもうしばらくお待ちください。もし、どうしても使ってみたいという方はbeatword@cypac.co.jp宛に電子メールでご連絡ください。

BeatWord Version 3.0

1999 年 4 月半ば、Version 2.1.0 の作業が一段落したため、いよいよ BeatWord を Win95/98/NT 等でネイティブの 32-bit アプリケーションとして動作させるためのプログラミング作業(Win32 対応)を開始しました。作業の方針は、機能は Version 2.0 を踏襲し、表面的な機能の拡張は行わない純粋な 32-bit 対応としました。こうして誕生したのが BeatWord Version 3.0 です。

機能的に Version 2.1 を踏襲するという目標はクリアできたものの、従来のファイル形式の内部に、16-bit Windows に依存した部分が含まれていたため、Version 3.0 のファイル形式は新たなものとなってしまいました。ただし、Version 3.0 では以前の Version 1,2 のファイルの読み込みは可能です。

現在 BeatWord Version 3 はベータテストを行っています。一般の BeatWord ユーザからのバグの報告や、ご意見、ご希望などを集めて、より使いやすい安定版を目指しています。

マニュアルウェア

Version 3.0 の安定版のリリース後、BeatWord のマニュアルの執筆に取り組む予定です。マニュアルは書籍(ソフトウェアの CD-ROM 付き)として出版し、この印税を BeatWord の開発費用に充てることを考えています。

BeatWord はソースコードを公開したフリーソフトですが、正式マニュアルが書店で売られるという点を従来のフリーソフトとは異なる点としたいと思います。この概念を「マニュアルウェア」と名づけました。BeatWord の開発を応援したいと考えられている方はマニュアルが書店で販売されるようになった暁には、ぜひマニュアルの購入をご検討ください(強制ではありません、あくまでも任意です)。

BeatWord の将来

Version 3.0 は Version 2.0 の 32-bit 対応版という位置付けで、Version 2.0 の持つ機能が安定して Win32 でも動作させるのが目的です。Version 3.0 の安定版のリリース後、ユーザからの声を反映させ、機能拡張や使い勝手の向上をめざして次期 Version 4.0 の開発も行っていきたいと考えています。

この際に、OLE のサポートなどの肥大化につながりそうなものはできるだけ避け、軽量ながらワープロとしての使い勝手の向上に結び付くような機能の拡張の方向を考えています。具体的に現在 Version 4.0 で実現したいと考えている機能は次の通りです。

  • ダイアログの中で指定する単位系で mm, cm, point, inch 等を用意する
  • ルーラのサポート
  • Shift JIS 以外の JIS(ISO-2022-JP), EUC, Unicode 等の漢字コードのテキストファイルの読み書き
  • 他のワープロ形式の読み込み
  • 文字、線、背景の色属性の追加
  • バックグランドの色やビットマップのサポート
  • 張り込み図形のトリミング/タイリング/比率維持
  • よりいっそうの縦書き対応
  • 線種の追加
  • HTML/XML 対応
  • etc...
  • また機能の拡張以外に、次のようなバリエーションも考えています。

    英語版 BeatWord

  • BeatWord の国際進出
  • 英語版の Windows でも日本の文章を書けるようにする(海外での日本語利用に役立つはず)
  • 小学校低学年向け BeatWord

  • 機能を限定して、ユーザインターフェースも簡単なものにする(難しい漢字や表現をさける)
  • 教育現場の需要に堪えられるもの
  • 高齢者向け BeatWord

  • ユーザインターフェースの文字を大きめにする
  • 縦書きをデフォルトにする

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